義務教育費の一般財源化は障害児教育の危機

        高教組南部支部・島尻養護学校・島尻澤一

 

1.沖縄における障害児学校と教育の現状

@全県で 盲・ろう・養護学校(知的遅れ・肢体障害・病弱)などの障害児が学ぶ16校の障害児学校があり、幼稚部、小学部、中学部、高等部に1766名の子どもたちが学んでいます。そして、そこに勤める教員の数は1020名になります。これは教諭の数だけですので職員全体としては、ほぼ児童生徒の数と同じくらいになります。

A障害児学校は、すべてが高等部を併設しているので、義務教育対象の小学部、中学部だけの児童生徒の数は1038名になります。

 

2,児童生徒の障害の実態

@障害児のクラス編成は、8名が一クラスになりますが、障害が軽く一つだけしかないことが条件になっています。しかし、最近は、自閑症など障害が多様化・重度化しており、軽度障害児が学ぶ高等養護学校以外のすべての学校で2つ以上の障碍を併せ持つ子どもたちが多くなっています。そのために、学級編成では、障害の重い子どもたちを対象にした重複学級が編成され少人数のクラス編成がなされて細かくてあつい指導がなされています。

Aほとんどの学校に医療的ケアーの必要な児童生徒が学んでいます。特に、肢体障害の学校では、医療機器を使用している子どもたちが多く学んでいます。

 

3,障害児教育で義務教育費が廃止された後に起こる問題

@これまでは、障害の実態を配慮した少人数のクラスで手厚い指導ができたが、職員の軽減によって一クラスの人数が増えるおそれがあり、子どもひとりひとりに配慮した教育ができなくなる実態が生じるおそれがあります。

A障害の重い児童生徒の指導には、移動や介助などの仕事も付随しますが、今でも頚腕症や腰痛などの健康破壊が職員に進んでいますが、職員の人数が軽減されると今以上に職員の健康破壊が進んでしまい、子どもたちの教育にも大きな弊害が起こってきます。

B最近になって、医療的ケアーの必要な子どもたちが、学校でようやく教育を受けられるような実態が整いつつありますが、義務教育費が廃止になると職員減が起こり、障害の重い子どもや医療的ケアーの必要な子どもたちの命を守ることすら危うくなり、教育を受ける権利すら保障されなくおそれが出てきます。

 

4,今後の特別支援教育のあり方の中ではもっと混乱を招く

@文部科学省は、障害児の今後の教育指針として「今後の特別支援教育のあり方」を報告しました。その大きな特徴は、今まで障害児教育の対象でなかった学習障害児(LD)注意欠陥多動症(ADHD)高機能自閉症を障害児教育の対象にするとしました。

 今、全学齢時の6%が対象になるといわれています。その施策を進めるに当たっては特別な財政的措置はせず、障害児学級を廃止してすべての障害児を普通学級で学ばせるという方針を打ち出しています。義務教育費の廃止でただでさえ教職員が不足するおそれがある中では、対象になる障害児だけではなく、ともに学ぶ健常児にも大きな混乱を招くおそれがあります。

Aまた、普通学校に通学することを希望する障害児は、認定されれば普通学校で学ぶことをすすめていきたいとしています。これから、多くの障害児が地域の普通学校で学ぶ状況が顕著になってくると思われます。しかし、障害児学級を廃止して特別支援教室を設置して対応するとしていますが、教室には職員が定数としては配置されず、障害児の教育が十分な体制で取り組まれなくなり、ますます混乱が予想されます。

Bもう一つの大きな特徴は、障害児教育を生涯教育という観点からすすめるということです。そのために、学校以外の関係機関、医療機関、福祉機関、労働機関と連携しながら障害児の教育をすすめるとしています。そして、その連携の窓口になる職員を各学校に配置するとしていますが、特別な定数として配置するのではなく現在いる職員を分掌として配置するとしています。ただでさえ職員が手薄になる状況の中では、職員の多忙化と教育の後退を招くおそれがあります。